私の議会報告

令和2年第1回定例会3月23日 
中野区犯罪被害者等支援条例 賛成討論

ただいま上程されました第39号議案、中野区犯罪被害者等支援条例に賛成の立場で討論いたします。
まず初めに、自治体に犯罪被害者等を支援するための条例が必要な理由を述べます。
2004年12月16日、犯罪被害者たちの声が国を動かし、被害に遭ったときから元の安定した生活ができるまで、途切れない支援を受ける権利を法律に明記した犯罪被害者等基本法が成立しました。それ以前は、家族を殺害された被害者が警察署に呼ばれ、遺体を確認すると、警察から遺体運搬業者を紹介され、遺族自身が全ての手続をし、運搬費も自己負担で、やっと家族の遺体を引き取れる状態でした。
犯人が挙がり、長い裁判が始まると、加害者には国選弁護士がつき、法廷内で発言できますが、被害者は法廷内に入れず、傍聴席で声を潜めて泣くことしかできませんでした。加害者の動揺を誘うとして、遺影の持ち込みさえできませんでした。裁判の記録をコピーしてもらうにも、被害者自身が何万円も費用を払わなければなりませんでした。例えば、家族を殺された上、家に放火された場合、警察の事情聴取の後、「はい、家に帰っていいですよ」と言われ、消失した家を思い、どこに帰ればいいのか途方に暮れました。奥様が殺人未遂事件に遭い、寝たきりになった御家族は、御主人が二人の小学生のお子さんを育てて、奥様の介護をしながら医療費を払うために懸命に働き、御自身も病気になってしまいました。
悲惨な犯罪被害者遺族の例は挙げれば切りがありません。被害者たちは、愛する人を失った深い悲しみの中で、突然自分が社会から見捨てられた存在になったことに気づき、長い間苦しめられてきました。
2004年、犯罪被害者等基本法の成立後、犯罪被害者等基本計画が制定されました。また、被害者参加制度、附帯私訴制度など新たな司法制度が実現し、ようやく犯罪被害者等の置かれた状況は変わってきました。
愛する家族の遺体は無料で家に戻り、裁判では被害者遺族も法廷内で意見を述べることができるようになりました。裁判記録は2,000円で手に入るようになりました。これら被害者遺族の地位向上は、被害者等当事者たちが全国で署名運動をして、国に直訴してやっとつかみ取った権利です。しかも、その権利は、被害者たちがこれまで苦しんできたことを誰も二度と繰り返さないように、これから被害に遭うかもしれない世の中全ての人のために用意した権利なのです。
犯罪被害者等基本法の第3条には、国や地方公共団体は、その基本理念にのっとり施策を策定し、実施する責務を負うと書かれています。中野区では、その責務を果たすべく、2008年に犯罪被害者等相談支援窓口を設置し、被害者たちの相談に乗ってきました。警察署や裁判所に関係する手続なども行い、裁判、病院の付添いなども行ってきました。2011年6月からは、社会福祉協議会のほほえみサービスの既存のサービスを使い、家事援助等のサービスも始まりました。それらの取組は、多くの自治体、警察、内閣府などから注目され、中野区は被害者支援の先進自治体として、職員は全国から講演に呼ばれるようになりました。実際に中野区は全国の犯罪被害者等の支援の牽引役を果たしてきました。東京都からも研修の講師として呼ばれてきました。
しかし、残念ながら、これまで条例の制定には至りませんでした。私は何度も議会で条例の制定を訴えてきましたが、中野区は条例がなくても要綱でしっかりとした支援が行われているから問題ないという理由で却下されてきました。しかし、その支援は、高い意識と能力を持つ担当職員の存在によって実現できてきたことであり、職員の異動、窓口相談員の交代などによっては、継続が難しくなるおそれがあります。被害者支援を確実、継続的に行うためには、私たち区民の代表である議員が必要と認め、区民皆で理解を深めていくことができるように条例を制定することが大切なのです。
区民の代表である議会が条例として制定することで、心に深い傷を負い、絶望の中にいる被害者は、区民皆が温かく支えてくれていることに気づき、それは何よりの心のよりどころになるでしょう。
犯罪被害は、防ぐことが難しい地震や台風などの自然災害とは違い、人によって起こされる人災なのです。犯罪被害者のための条例は、中野区が悪意に満ちた人災を決して許さない、傷ついた隣人を見捨てない、区民全体で温かく支え合う地域社会づくりを目指す自治体であるということを示す大きなフラッグなのです。
次に、条例の内容について述べます。
この条例は、基本理念には、置かれている生活環境、心身の状況、その他の状況に応じて必要とされる支援を途切れなく行うこと、また、二次被害、再被害の発生防止に配慮することなどが盛り込まれています。全国でもまだ極めて少ない自治体にしか明記されていない被害者条例としての必須条文である重要な条文が盛り込まれています。
また、第6条の犯罪被害者等の支援に係る施策の充実には、経済的負担の軽減のための支援、日常生活への支援、精神的被害の早期軽減・回復への支援、法律問題の解決への支援、住居に関する支援等、どれも犯罪被害者等に向き合い、支援を続けてきた経験が反映された被害者にとって必要な支援がしっかりと盛り込まれています。特に条例の考え方として示された内容を見ますと、法律問題の解決の支援の中には、刑事裁判への参加、民事裁判への参加を可能とする費用も含まれています。大切な家族が無残にも殺されたり、自分が大きな傷を負わされたりした被害者が裁判で加害者に向かって自分の気持ちを供述し、損害賠償を請求することは個人では大変厳しいことです。そこで、弁護士の力を借りたいと思っても、多くの人は弁護士の知り合いなど持たずに途方に暮れます。また、実際にお金がなく、弁護士を雇うことのできなかった被害者たちもたくさんいます。この条例が制定され、被害者の持つ数少ない、それでも被害者が自ら勝ち取ってきた大切な権利、被害者参加制度や損害賠償請求のスタートラインに立つことができる弁護士費用の助成制度は、被害者等の被害回復に大きく寄与するものと考え、高く評価いたします。
ただ、1点だけ、私が残念に思うことがあります。被害者のための条例は、被害者の人権を守る条例であるので、名称を国と同じ「犯罪被害者等基本条例」としていただきたかったことです。しかし、その内容は、きちんと被害者の権利、名誉を重んじる条例となっていますので、名称にはこだわらず、支援条例を受け入れていきたいと思います。
最後に、2008年、中野区に犯罪被害者等相談支援窓口が設置された時点では、犯罪被害者の支援はほとんど聞くこともない手探りの状態でした。全国に先駆けて専門窓口の設置に向け勉強を始められ、様々な支援策を作り、被害者団体の話に耳を傾け、実際に中野区の相談窓口を頼ってきた被害者等を支援し、全国で先進的な取組であると評価されるまでに中野区の犯罪被害者等相談窓口を育ててこられた歴代の課長、担当職員の皆様に深く感謝いたします。
そして、このたび、大変短い時間に被害者の権利と被害回復へのステップをしっかりと盛り込んだ条例を作ってくださった職員の皆様、条例制定を決断された区長、また、日常的に忙しい健康福祉部の職務の中、犯罪被害者等相談支援窓口の担当が他自治体へ講演に行くときに、仕事を分担して補ってくださった職員の皆様、多くの皆様の御理解、御尽力に心から感謝しております。
また、温かく犯罪被害者等を見守り続けてくださった同僚議員の皆様にも感謝いたしまして、私の賛成討論といたします。全会一致での御賛同をいただけますようにお願いいたします。ありがとうございました。

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